テナントリテンションの発想を!~長く住んでもらうための工夫 「自分らしく楽しめる賃貸~家全体を楽しむ家」~後篇
魅せる収納や棚スペース
家全体を楽しむという観点から、前回は「入居者が選べる内装材」について紹介しました。
今回おすすめするのは、魅せる収納や棚スペースを作ることです。
事例④のようなオープンの棚とクローゼットを作り、店舗のように美しく魅せるディスプレイをします。通常なら収納の中にしまわれているお気に入りの洋服や雑貨を、いつも眺めながら生活できる場所があるのは、入居者の何よりの幸せにつながっていくことでしょう。
また、オープンな棚は片づけが苦手な入居者にも喜ばれます。片づけが苦手な方の中には、クローゼットなどの収納に何が入っているかを把握できずに困っている方が多いもの。住みやすい環境が続けば毎日がどんどん楽しくなるはずです。
DIY可能スペースを作る
DIYも最近人気ですが、本格的なDIYを賃貸物件で行うのは躯体や表面では分からない配管を傷つけてしまうなど、大きなリスクを伴います。例えば、「この壁のみ、クロスの上に張るのはOK!」など、DIY可能スペースを示しておくことが必要でしょう。また、スペース的に問題なくても、電動ドリルや電動ノコギリなどの騒音が近隣へ迷惑になるのではと気になる方も多いかも。でも何か、自分らしく手作りしたい!そんな入居者のために、事例⑤のようなボードを壁面に採用してみてはいかがでしょうか。
この面は木ネジやクギの傷が目立たないので、棚を作ったり、作品を飾ったり、プチDIYを楽しめる趣味の場所になります。
健康素材を一部に取り入れる
最後にご紹介するのは、健康素材を一部に取り入れるケースです。例えば、 事例⑥のようにフォーカルポイントとなる壁面に、調湿効果のあるエコカラットを施工してみましょう。フォーカルポイントというのは、室内に入って最初に視線が向かう場所のこと。入り口から見て対角線上の壁面を指すことが多いです。
このフォーカルポイントに素材感のあるエコカラットタイルを使用することで、お部屋の良いアクセントになるだけでなく、夏は不快な湿気を吸い、冬は乾燥しがちな湿度を保ってくれる効果があり、一年中快適に過ごすことが出来ます。調湿効果があることで建物の保護にも一役買ってくれれば、家主様にとってもメリットがあると言えるでしょう。(事例⑥)
このように、自分でセレクトした内装、飽きたらアレンジや変更ができる仕掛け、DIYで完全オリジナルになる空間など、様々な視点から入居者に毎日の暮らしを楽しんで頂くことで、自分の部屋に愛着が湧き、長く住みたくなる…というテナントリテンション効果が生まれるではないでしょうか。
筆者:IC21 堀江 梨江
インテリアコーディネーター/収育士
社長秘書を経て、念願のインテリア業界へ転身。照明、カーテン、家具を中心としたインテリアコーディネートや建設会社でのカラースキームを担当。現在は個人邸のトータルコーディネートや自宅サロンインテリアを数多く手がける。