「収納力がモノをいう」~洋室~後編
押入活用テクニック
理想的な収納計画とは、人間工学的に手の届きやすいところに使用頻度の高いものを収められること。『適材適所の収納計画』という言葉のとおり、日常生活の中では短い動線で素早くモノの出し入れができることがポイントとなります。モノがすっきり片付いていると、場所だけでなくモノを探す時間や心に余裕が生まれます。
大容量の収納ではありますが扱いに困るのが、古い日本の住宅に多く見られる奥行の深い押入。本来布団を収納するために作られた押入が、洋間にリフォームした賃貸住宅に残っているのを多く見かけます。しかし現代ではベッド生活を好む人が多いので、その押入収納の「奥行きの深さ」と「仕切りのない大容量空間」はデメリットにしかみえません。(写真③)
これらを解消するために、入居者が機能やサイズが押入れ用に工夫された収納アイテムを通常用意していると思いますが、その物件の魅力として、オーナー様が初めから設置しておくと大変喜ばれることでしょう。
また、収納ケースやハンガーパイプなどを使って押入を仕切ると、収納力もアップし、出し入れがしやすくなります。ハンガーパイプを押入れの上段に前後2本設置すれば、大量の洋服入れに早変わりです。
内装工事で手を加えるなら、天袋(または枕棚)までを天井までの壁面収納として襖を撤去し、折れ戸や3枚引き戸などを取り付けることで、ファミリータイプに嬉しい開口部の大きい大容量のクローゼットにすると良いでしょう。
また押入れを見せる収納として好みの収納グッズで機能的なスペースにするのも、DIY好きな今の若者にはオンリーワン生活を楽しめる良い方法ですね。
押入れは中段を外せば、1畳ほどの空間が生まれます。壁面に剥がせるクロスを張ったり、水性塗料でリメイクしたり、インテリアイメージを決めてこだわりの小物をディスプレイしたり。多目的に使える空間として自分好みにDIYすることで部屋への愛着が増すことでしょう!内覧時にそういった施工事例のパネルを設置し、入居後の具体的なイメージが思い描ける工夫も取り入れてみましょう。
機能性・インテリア性に優れたシステム収納の選び方
2015年のLIXIL住宅研究所が報告した調査結果によると4人に3人は、住んでいる賃貸住宅に不満を持っており、具体的な内訳では「壁が薄いため、隣室や外の音がうるさく、室内の音も外にもれる」(23.1%)という結果が・・・。実に2割以上の入居者が音に対して不満を感じていることが浮き彫りになっています。そういった建物そのものの機能性については大掛かりなリフォーム工事を施さないと解決が難しくそれなりの費用がかかります。
では視点を変えて、例えば隣室との間仕切り壁一面にシステム収納を設置したらいかがでしょうか?壁を厚くするリフォーム工事に匹敵する、隣室からの防音効果が期待できます。初期費用はかかりますが、壁に近い色の扉面材を使えば部屋全体の統一感も生まれ、魅力的なアクセントウォールとして物件のグレードアップにつながります。
システム収納にはAVボードやTVボードと一体となったものもあり、機能性、インテリア性両方を兼ね備えたすぐれた収納として人気があります。また最近のシステム収納は耐震ラッチ仕様となっているものが多く、固定されていない置き家具のように転倒の心配がなく、地震の際の安全性も確保されています。
選ぶ際は、扉のある収納部分とオープン棚の両方を併せ持つデザインのものを選ぶのも一つの方法です。(写真⑤)「見せる収納」と「隠す収納」テクニックは生活を豊かにすると同時に、オープン棚をディスプレイすることで内覧者の目を引くことができます。さらに、縦長の扉を1か所ミラー仕様にすると圧迫感が軽減され、部屋を広く見せる効果も期待できます。実際に、使用頻度の高いモノをまとめて1か所に収納できるので、お部屋も広く使えるのです。
空室対策でよく言われるのが物件の差別化というフレーズです。ファミリー向けの物件で、北側に面していると空室になりやすいものですが、賃貸住宅に不足している収納を大きくとることで、魅力的な物件として印象に残り成約率を高めることができるのでしょう。
宮沢 和子:プロフィール
インテリアコーディネーター/キッチンスペシャリスト/マンションリフォームマネージャー/整理収納アドバイザー
ハウスメーカー系リフォーム会社、インテリア事務所を経て、現在はフリーランスのインテリアコーディネーターとして、個人邸中心にお施主様の住まいのお悩みをトータルで解決に導くお手伝いをしております。